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函館地方裁判所 昭和55年(わ)30号 判決

本店所在地

函館市松風町四番一七号

有限会社 小林商事

右代表者代表取締役

小林一夫

本店所在地

同 市松風町三番五号

有限会社倫敦

右代表者代表取締役

小林一夫

本籍

同 市旭町二番地の四

住居

同 市元町二一番七号 元町シュロス二〇四号

飲食店業兼会社役員

小林一夫

昭和八年三月一日生

右三名に対する法人税法違反、右小林に対する所得税法違反各被告事件につき、当裁判所は、検察官伊豆亮衛出席のうえ審理して、次のとおり判決する。

主文

被告会社有限会社小林商事を罰金六七〇万円に、同有限会社倫敦を罰金五〇〇万円に、被告人小林を懲役一年及び罰金二六〇万円にそれぞれ処する。

被告人小林において右罰金二六〇万円を完納することができないときは、金一万円を一日に換算した期間、同被告人を労役場に留置する。

被告人小林に対し、この裁判の確定の日から二年間右懲役刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

第一  被告会社有限会社小林商事は、函館市松風町四番一七号に本店を置き、料理飲食店等の経営を目的とする資本金三〇〇万円の有限会社であり、被告人小林一夫は同会社の代表取締役として業務全般を統括しているものであるが、被告人小林一夫は、同被告会社の業務に関し、法人税を免れようと企て、売上の一部を除外する等の不正な方法によりその所得を秘匿したうえ

一  昭和五一年一〇月一日から同五二年九月三〇日までの事業年度における同会社の実際所得金額が五、三九一万八、九七九円で、これに対する法人税額が二、〇二一万五、四〇〇円であるにもかかわらず、同五二年一一月三〇日函館市新川町二六番六号所在の函館税務署において、同税務署長に対し、総所得金額が一、九七八万二、八七四円であり、これに対する法人税額が六六〇万一、三〇〇円である旨の内容虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって不正の行為により、同会社の右事業年度における正規の法人税額と申告税額との差額一、三六一万四、一〇〇円の法人税を免れ

二  同五二年一〇月一日から同五三年九月三〇日までの事業年度における同会社の実際所得金額が六、六七三万六、八八九円で、これに対する法人税額が二、五三四万五、六〇〇円であるにもかかわらず、同五三年一一月三〇日前記税務署において、同税務署長に対し、総所得金額が二、四〇四万四、九五一円であり、これに対する法人税額が八三〇万二、三〇〇円である旨の内容虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって不正の行為により、同会社の右事業年度における正規の法人税額と申告税額との差額一、七〇四万三、三〇〇円の法人税を免れ

第二  被告会社有限会社倫敦は、函館市松風町三番五号に本店を置き、飲食店の経営等を目的とする資本金五〇〇万円の有限会社であり、被告人小林一夫は同会社の代表取締役として業務全般を統括しているものであるが、被告人小林一夫は同被告会社の業務に関し、法人税を免れようと企て、売上の一部を除外する等の不正な方法によりその所得を秘匿したうえ

一  昭和五一年八月一日から同五二年七月三一日までの事業年度における同会社の実際所得金額が四、〇七一万六、八八一円で、これに対する法人税額が一、四九六万三、〇〇〇円であるにもかかわらず、同五二年九月三〇日前記税務署において、同税務署長に対し、総所得金額二、〇四八万八、六四四円であり、これに対する法人税額が、六九〇万五、七〇〇円である旨の内容虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって不正の行為により、同会社の右事業年度における正規の法人税額と申告税額との差額八〇五万七、三〇〇円の法人税を免れ

二  同五二年八月一日から同五三年七月三一日までの事業年度における同会社の実際所得金額六、一五七万七、〇八四円で、これに対する法人税額が二、三二九万三〇〇円であるにもかかわらず、同五三年九月二九日前記税務署において、同税務署長に対し、総所得金額が二、四〇八万一、五二一円であり、これに対する法人税額が八三二万七、三〇〇円である旨の内容虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって不正の行為により、同会社の右事業年度における正規の法人税額と申告税額との差額一、四九六万三、〇〇〇円の法人税を免れ

第三  被告人小林一夫は、函館市旭町二番四号において、飲食店「バー・モンシェリー」を経営するなどしているものであるが、所得税を免れようと企て、売上の一部を除外する等の不正な方法によりその所得を秘匿したうえ

一  昭和五一年一月一日から同年一二月三一日までの事業年度において、実際の総所得金額が一、七八一万六、三七一円であり、これに対する所得税額が四五九万四、五〇〇円であるにもかかわらず、同五二年三月一一日前記税務署において、同税務署長に対し、総所得金額は一、一五二万七、五〇六円であり、これに対する所得税額が一五五万七、一〇〇円である旨内容虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって不正の行為により、被告人の右事業年度の正規の所得税額と申告税額との差額三〇三万七、四〇〇円の所得税を免れ

二  同五二年一月一日から同年一二月三一日までの事業年度において、実際の総所得金額が二、〇五〇万一、五四六円であり、これに対する所得税額が五五七万六、九〇〇円であるにもかかわらず、同五三年三月一三日前記税務署において、同税務署長に対し、総所得金額は一、三二八万六、六〇〇円であり、これに対する所得税額は一九四万八、二〇〇円である旨内容虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって不正の行為により、被告人の右事業年度の正規の所得税額と申告税額との差額三六二万八、七〇〇円の所得税を免れ

三  同五三年一月一日から同年一二月三一日までの事業年度において、実際の総所得金額が二、〇八三万五、二六〇円であり、これに対する所得税額が五四六万三、〇〇〇円であるにもかかわらず、同五四年三月一三日前記税務署において、同税務署長に対し、総所得金額は一、三二四万三、九九〇円であり、これに対する所得税額は一六七万三、二〇〇円である旨内容虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって不正の行為により、被告人の右事業年度の正規の所得税額と申告税額との差額三七八万九、八〇〇円の所得税を免れ

たものである。

(証拠の標目)

判示事実全部につき

一  被告人の当公判廷における供述

一  被告人の検察官に対する供述調書

一  被告人の大蔵事務官に対する昭和五四年八月七日付、一一月二〇日付(八丁綴のもの)質問てん末書

一  登眞人、小納谷勝、小川ミツ子、岡部順子及び小林ヤイ(三通)の検察官に対する各供述調書

一  笠井一成、小川ミツ子(二通)、岡部順子、西村三枝子(二通)、小林ヤイ(六通、昭和五四年五月二三日付、同月二五日付、同年八月一三日付、同年一二月九日付、同月一一日付、二通)の大蔵事務官に対する各質問てん末書

一  大蔵事務官中野渡誠幸(昭和五四年一二月一八日付)、同外館健一(同月三日付)、同矢野均ほか二名(同年七月三一日付)、同出村政治、同中野渡誠幸ほか一名、同浅沼正義ほか一名(二通、同年七月三一日付、同年一一月二七日付)、同矢野均(同年七月三一日付)作成の各調査事績報告書

一  加藤豊、飯島敏男、安田貞郎、大坂谷道三及び井口元郎作成の「証明書」と題する各書面

一  押収してある出納帳六冊(昭和五五年押第二〇号の五)、売上グラフ一冊(同号の一一)

判示第一及び第二の各事実につき

一  小林ヤイの大蔵事務官に対する昭和五四年一一月二三日付、同年一二月一〇日付(一〇丁綴のもの)質問てん末書

一  大蔵事務官中野渡誠幸ほか一名(昭和五四年一一月一二日付)、浅沼正義ほか一名(同年一二月四日付)作成の調査事績報告書

一  渡島支庁長作成の「道税の課税状況について(回答)」と題する書面

一  新明克己作成の答申書

判示第一の事実につき

一  被告人の大蔵事務官に対する昭和五四年五月二五日付、同年六月二一日付質問てん末書

一  橋本豊の検察官に対する供述調書

一  小林ヤイの大蔵事務官に対する昭和五四年一一月二二日付、同年一二月九日付質問質問てん末書

一  大蔵事務官浅沼正義ほか一名(昭和五四年一二月八日付)、同浅沼正義(同年一一月一七日付、同月二七日付、同年一二月一日付、同月四日付五通<記録証第一二号、同第一四号、同第一五号、同第四七号、同第五七号>、同月八日付)、同外館健一(同年一一月三〇日付二通、同年一二月一日付、同月四日付)、同矢野均ほか二名(同年六月一五日付)、同福士英彦ほか一名、同外館健一ほか一名(同年五月二八日付)、同大野富雄、同玉川喜一郎ほか一名、同中野渡誠幸(同年七月三〇日付三通、同年八月二二日付、同月二九日付、同年一〇月一八日付、同年一二月二二日付)、同清水修ほか三名、同清水修(二通)、同清水修ほか二名、同石川喜代春ほか一名(三通)、同山本二郎ほか一名(二通)、同山本二郎ほか四名、山崎憲宣ほか二名作成の各調査事績報告書

一  箱崎敬知、松尾哲朗、中村重行、豊島正則、佐々木昭則、真田彦衛(二通)、山田実、工藤孝、鉢村淳、川崎覚、京三郎、岩原良次、庄司義史、中村康吉、榊浩、森田毅、村本透、亀田直治、山内幸雄及び鎌田曉作成の「証明書」と題する各書面

一  大蔵事務官浅沼正義作成の「脱税額計算書」と題する書面(記録証第八号)

一  登記簿謄本(記録証第一号)

一  押収してある法人税決議書一綴(昭和五五年押第二〇号の一)、現金預金出納帳二冊(同号の六、七)、実売上ノート二冊(同号の九、一〇)

判示第二の事実につき

一  被告人の大蔵事務官に対する昭和五四年一一月二〇日付(七丁綴のもの)質問てん末書

一  小林ヤイの大蔵事務官に対する昭和五四年八月一四日付、同年一一月二一日付、同年一二月一〇日付(一一丁綴のもの)質問てん末書

一  大蔵事務官浅沼正義(昭和五四年一二月四日付五通<記録証第二三五号、同第二三六号、同第二三八号、同第二四〇号、同第二四七号>、同月七日付、同月八日付、同月二三日付)、同浅沼正義ほか一名(同月四日付、同月一四日付)、同中野渡誠幸ほか一名(同月四日付)作成の各調査事績報告書

一  大蔵事務官浅沼正義作成の「脱税額計算書」と題する書面(記録証第二三一号)

一  登記簿謄本(記録証第二三〇号)

一  押収してある法人税決議綴一綴(昭和五四年押第二〇号の二)、実売上ノート一冊(同号の一四)

判示第三の各事実につき

一  被告人の大蔵事務官に対する昭和五四年一一月二〇日付(六丁綴のもの)質問てん末書

一  小林ヤイの大蔵事務官に対する昭和五四年一一月二一日付、同年一二月一〇日付(五丁綴のもの)質問てん末書

一  大蔵事務官寺井四郎、同浅沼正義(昭和五四年一二月四日付二通、記録証第二五三号、同第二五四号)、外館健一(同月一〇日付、同月五日付)、浅沼正義ほか三名(同月一〇日付)作成の各調査事績報告書

一  大蔵事務官作成の「脱税額申告書」と題する書面(記録証第二五一号)

一  押収してある確定申告書綴一綴(昭和五四年押第二〇号の三)、青色申告者書類つづり一綴(同号の四)、実際出納帳一冊(同号の八)、実売上ノート(同号の一三)

(法令の適用)

一  被告会社有限会社小林商事

判示第一の各事実につき いずれも法人税法一五九条一項、一六四条一項

併合罪加重につき 刑法四五条前段、四八条二項

二  被告会社有限会社倫敦

判示第二の各事実につき いずれも法人税法一五九条一項、一六四条一項

併合罪加重につき 刑法四五条前段、四八条二項

三  被告人小林一夫

判示第一及び第二の各事実につき いずれも法人税法一五九条一項

判示第三の各事実につき いずれも所得税法二三八条一項

刑種の選択につき 各罪につき、いずれも懲役刑と罰金刑を併科

併合罪加重につき 刑法四五条前段、四七条本文、一〇条、四八条二項(懲役刑につき判示第一の二の罪の刑に加重)

換刑処分につき 刑法一八条

懲役刑の執行猶予につき 刑法二五条一項

よって主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 谷口敬一 裁判官 岡村稔 裁判官 小倉純夫)

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